明けの空に願う
ざわざわと多くの人の声が飛び交っている。その中に、波の音が微かに混ざって聞こえてくる。穏やかな海の音は途切れることなく続いているはずなのに、聴力の良い種族でなければこの喧騒の中では届かないだろう。 なんとなく毎年来てい…
シャスポー先生の休日
ここ最近、シャスポー先生が休んでいる。 それは別に病休とかそういう意味ではなくて、休日に病院で顔を見ることが減った、という意味である。 いや本来、それが当たり前なのだが。 シャスポー先生は優秀だ。技術も高く、日々努力を…
ローレンツ先生の救出
それは出勤前に、病院近くのコンビニへ寄って買い物をした日のことだった。昼食用のパンを買い、会計を済ませて病院へ向かおうとして店を出たその時。向こうから、見慣れた人物が歩いてきた。「ローレンツ先生」 シンプルなシャツに、…
タバティエール先生の憂鬱
タバティエール先生は、救命救急科の中でも年長の医師だ。 シャスポー先生やドライゼ先生を前に、『俺はあいつらみたいに優秀じゃないから、サポート役くらいがちょうど良いのさ』なんて言ってはいるけれど、本人だって相当な実力者だ…
スキスキダイスキアイシテル
銃とは、人が創り出した道具である。そこに自分の意思などなく、ただ使い手が思うように、性能を発揮するだけ。特に量産型である僕らは、唯一品の銃よりも多くの人に触れている。僕ではない、別のシャスポー銃の記憶も、ある程度は持ち…
私が欲しいと願うもの
ガタン、ゴトンと不規則な音が耳に届き、そのたびに小さな揺れを体に感じる。大きな窓の外にはゆるやかに流れていく景色。出発した時には紺青に塗りつぶされていた夜空が、だんだんと昇っていく太陽に色を溶かされ、朝と夜の境目に綺麗…
HAPPY BIRTHDAY②
こんなにたくさんの人にお祝いされた誕生日なんて、初めてかもしれない。 この基地は、貴銃士たちだけでも、三十はゆうに越えている。それにレジスタンスの仲間もいる。それぞれ任務もあるから全員が一度に集まったわけではないけれど…