雪解け水に想い溶かして

 光に覆われた第一世界を救い、原初世界での第八霊災も防いだ英雄。原初世界では光の戦士、こちらの世界では闇の戦士と呼ばれた彼女は、突然召喚されたにもかかわらず、正体も明かせずにいた自分を信じて最後まで戦い抜いてくれた。 大

いちばんの大切なもの

   賑わう街を、二人で歩くのは楽しい。グリダニアで行われているヴァレンティオンのイベントを見に、シャーレアンから来たグ・ラハ・ティアは平静を装いつつ内心では浮かれていた。愛の日一色に彩られた街はいつもと雰囲気が違ってい

君の紡いだ奇跡をたどる

 世界の為に戦い、走り続ける日々も、過ぎ去ってしまえばあっという間に感じられる。「お茶が入りまっした!」「ありがとう、タタルさん」 人の少なくなった石の家で、彼女は仲間たちとテーブルを囲んでいた。テーブルにはタタルが淹れ

明けの空に願う

 ざわざわと多くの人の声が飛び交っている。その中に、波の音が微かに混ざって聞こえてくる。穏やかな海の音は途切れることなく続いているはずなのに、聴力の良い種族でなければこの喧騒の中では届かないだろう。 なんとなく毎年来てい

灰と愚者の邂逅

 出会いは最悪だった。 平凡な家庭に生まれながら、身に余る力を持っていた故に何もかも失ってきた俺と。 厳しい境遇に生まれ力も何もない所から、自力であらゆる物を手にしてきたアイツと。 正反対の二人。何の共通点もない……強い

祝杯

 雲一つない晴天のクルザス中央高地。救国の英雄である青年は黒チョコボを駆り、スチールヴィジルの先へと向かっていた。イシュガルドを一望できるこの場所には、一つの墓石がある。「来たぜ、オルシュファン」 青年はチョコボから降り

恋人になったその日は

 長くイシュガルドで続いてきた竜詩戦争が一人の英雄によってその幕を閉じ、それからは目まぐるしい国内の変化で日々忙しく過ぎていく。 ……というのは引退した父に代わり家督を継いだ兄や、政治に関わる者達など周囲の人の話で、エマ

秘めた恋は雪花に紛れ

 一度に色々なことが起きて、簡単に頭が受け入れてくれない。 それでも絶望せずにいられたのは、優しく差し伸べられた手があったからだ。  ――英雄と呼ばれた少女は一夜にして罪人の身となった。 クリスタルブレイブの裏切り。罠に