カウントダウン
1 終わりの始まり 酷い耳鳴り。真っ白に霞む視界。激しい痛み。喉の奥から漏れる悲鳴。 得体の知れない何かが身体中を這い回るような、その何かに腹の内側から食い破られるような、強烈な違和感。 足下がふらつく。まと…
最初は、ただの冒険者の一人だった。名誉、力、金、自由……他にも様々なものを求めて、冒険者を志す者は数多くいる。 彼女もその一人だった。物心ついた時には両親はおらず、運良く商人に拾われて育てられた。大事に育…
洪水のように光があふれる眩いステージ。汗を煌めかせ、マイクを片手に歌って踊るステージ上の少年二人。「シノーーー!」 間奏にさしかかると女子生徒の歓声があがる。シノと呼ばれた少年は、声がした方を振り向くと、可愛らしく投げ…
「ふぅ、帰ってくるとほっとしますね」 こちらの世界に来てからもう住み慣れた魔法舎。その入り口に戻って来て、賢者は深い溜め息を吐く。「今日はありがとうございました、賢者様」 恭しくお辞儀をするのは、この中央の国の王子でもあ…
「賢者様」 燃えるような赤い髪と宝石のような美しい緑色の瞳をもった、綺麗な顔立ちの青年。長身に白衣をまとい、けだるげな空気をまとった彼は、いつも通り目の下に隈を作った眠そうな瞳で、じっとこちらを見下ろしている。 ただでさ…
魔法使い達の宿舎にある一室、北の魔法使いミスラが使用しているこの部屋は、夜だということを差し引いても他の人たちの部屋よりも薄暗い。呪術に使うという剥製や骨などの飾られた、妖しげにも感じられる部屋の中で、しかしベッドの周…
ふと気がついた時には、薄暗い室内にいた。闇に目が慣れてきた頃に、そこがモストロ・ラウンジだと気がついた。明かりすらなく、人の気配もない。何の匂いもしない。 フロイドはあたりを見回し、一応声をかけてみる。「ジェイドー、ア…
「ジェイド先輩って、大きいですよね」 モストロ・ラウンジの開店前。アルバイトに来ていた監督生が、彼を見上げて告げる。 仕込み中に、上の棚にある食器を取り出しただけ。ジェイドにとっては自然な動作だったが、彼の胸くらいまでし…
涼やかな風が通り抜ける。少し肌寒いくらいの外気も、室内の、しかもベッドの中にいれば気にならなかった。明るい天井を見つめたまま、監督生は小さな身体を強ばらせていた。 ここはオンボロ寮の自室ではない。サバナクロー寮の、寮長…