祝杯
雲一つない晴天のクルザス中央高地。救国の英雄である青年は黒チョコボを駆り、スチールヴィジルの先へと向かっていた。イシュガルドを一望できるこの場所には、一つの墓石がある。「来たぜ、オルシュファン」 青年はチョコボから降り…
長くイシュガルドで続いてきた竜詩戦争が一人の英雄によってその幕を閉じ、それからは目まぐるしい国内の変化で日々忙しく過ぎていく。 ……というのは引退した父に代わり家督を継いだ兄や、政治に関わる者達など周囲の人の話で、エマ…
一度に色々なことが起きて、簡単に頭が受け入れてくれない。 それでも絶望せずにいられたのは、優しく差し伸べられた手があったからだ。 ――英雄と呼ばれた少女は一夜にして罪人の身となった。 クリスタルブレイブの裏切り。罠に…
強い雨が全身に叩きつける。グリダニアの森で俺はただ一人立ち尽くし、雨に打たれていた。 血で滑った斧を離し、手のひらを見れば、雨に洗われてまばらに残った血の痕が薄明かりに照らされて見えた。 自分の血なのか、助け出そうとし…
任務を終え、報告にあがったグリダニアの街。ちらほら視線を感じるのが、どうにも落ち着かない。 街の人達は、英雄と呼ばれる存在が余程気になるのだろう。 自分ではエオルゼアを旅する一介の冒険者のつもりだったのに、いつの間…
最初は、ただの冒険者の一人だった。名誉、力、金、自由……他にも様々なものを求めて、冒険者を志す者は数多くいる。 彼女もその一人だった。物心ついた時には両親はおらず、運良く商人に拾われて育てられた。大事に育…