祝杯

 雲一つない晴天のクルザス中央高地。救国の英雄である青年は黒チョコボを駆り、スチールヴィジルの先へと向かっていた。イシュガルドを一望できるこの場所には、一つの墓石がある。「来たぜ、オルシュファン」 青年はチョコボから降り

恋人になったその日は

 長くイシュガルドで続いてきた竜詩戦争が一人の英雄によってその幕を閉じ、それからは目まぐるしい国内の変化で日々忙しく過ぎていく。 ……というのは引退した父に代わり家督を継いだ兄や、政治に関わる者達など周囲の人の話で、エマ

秘めた恋は雪花に紛れ

 一度に色々なことが起きて、簡単に頭が受け入れてくれない。 それでも絶望せずにいられたのは、優しく差し伸べられた手があったからだ。  ――英雄と呼ばれた少女は一夜にして罪人の身となった。 クリスタルブレイブの裏切り。罠に

trace #2

   あの日の出来事は、今も胸の奥深くに突き刺さっている。 夕焼けに染まるイシュガルド教皇庁。光の槍。彼の叫び声。視界の赤。 ……忘れられるはずが、ないんだ。  争いの最中にあっては、生と死は常に隣り合わせだ。

trace #1 

 真っ白な雪に覆われたクルザス中央高地。雪が降ることの多いこの地域も、天気予報士の言葉通り今日は晴れ渡っている。 稼ぐには絶好の日だ。 普段は戦士として斧を振るっているが、冒険者に開かれた技術は、戦闘だけでなく製作も採集

カウントダウン

 空を覆う眩いほどの光も届かぬ、暗い暗い海の底の奥深く。高くそびえ立つ建築物に灯る明かりは、地上の光とは違えどもこの幻影都市を照らし続けている。 その中の一つの建物。かの英雄との決戦の地として選んだ場所。既に不要となった

ある冒険者の記録。

 あまりにも、色々なことがありすぎた。濁流に飲み込まれるかのように目まぐるしく変わりゆく事態に、簡単に気持ちの整理などつくはずもなく。 目の前で起きたナナモ陛下の暗殺。罠にはめられ、その犯人として捕らわれた。そしてクリス