それはただ、一人のために
洪水のように光があふれる眩いステージ。汗を煌めかせ、マイクを片手に歌って踊るステージ上の少年二人。「シノーーー!」 間奏にさしかかると女子生徒の歓声があがる。シノと呼ばれた少年は、声がした方を振り向くと、可愛らしく投げ…
洪水のように光があふれる眩いステージ。汗を煌めかせ、マイクを片手に歌って踊るステージ上の少年二人。「シノーーー!」 間奏にさしかかると女子生徒の歓声があがる。シノと呼ばれた少年は、声がした方を振り向くと、可愛らしく投げ…
「ふぅ、帰ってくるとほっとしますね」 こちらの世界に来てからもう住み慣れた魔法舎。その入り口に戻って来て、賢者は深い溜め息を吐く。「今日はありがとうございました、賢者様」 恭しくお辞儀をするのは、この中央の国の王子でもあ…
「賢者様」 燃えるような赤い髪と宝石のような美しい緑色の瞳をもった、綺麗な顔立ちの青年。長身に白衣をまとい、けだるげな空気をまとった彼は、いつも通り目の下に隈を作った眠そうな瞳で、じっとこちらを見下ろしている。 ただでさ…
魔法使い達の宿舎にある一室、北の魔法使いミスラが使用しているこの部屋は、夜だということを差し引いても他の人たちの部屋よりも薄暗い。呪術に使うという剥製や骨などの飾られた、妖しげにも感じられる部屋の中で、しかしベッドの周…