今回は乗員が五人と少ない。グノーシアも一人。乗員に有利な条件、に見えていたけれど。チャンスが少ない分、一度選択を間違えると大変なことになる。
初日の投票先を誤り、夜の襲撃も許してしまった。船の残りは三人、俺とセツと沙明。グノーシアはこの中に一人。つまり、今回の投票を持って決着がつく。
俺の役割は守護天使だ。そしてセツはドクターだと確定している。なので沙明がグノーシアということだ。
だから、セツなら多分、大丈夫だと。思っていたのになんだか、議論の雲行きが怪しい。
いや、流石にセツなら俺を信じてくれるだろう。そう期待した投票結果を見て、俺は盛大に頭を抱える結果となった。
「えー……」
「マジか」
唸る俺と、信じられない、といった様子の沙明。二人の視線がセツに集まる。
コールドスリープの対象に選ばれたのは、ユーリ……つまり、俺だ。
怪訝そうに首を傾げるセツの仕草は可愛らしいのだけれど、でも、それはそれ。
「残念だがユーリ、ここでお別れだ」
「あぁうん、どっちにしろそれはそうなんだけど」
チラリと沙明の方に視線を移すと、なんとも言えない曖昧な笑みを浮かべていた。
投票でコールドスリープが決定した以上、従うしかない。これで最後だからと二人とも見送りにきてくれたので、少しだけ話をする。
「それにしても、信頼度で沙明に負けるとか……」
「もちろん君を信頼していないわけではないぞ。ただ、今回は敵だろう?」
「アーハァ、見事な追い打ちだなぁ、セツ」
流石に同情するぜ、と俺を見る沙明の顔に書いてある。沙明はグノーシアなのだから当然、俺が乗員であることを知っていた。
つまりこの場で知らなかったのはセツだけで、その投票の結果で運命が決まったという話だ。
「よかったな沙明、セツと二人きりだぞ」
「いやー、セツが俺を選んでくれて嬉しいぜ。実は俺に気があるんじゃね? ン?」
慣れ慣れしく肩に腕をまわして抱き寄せる。普段ならば突き飛ばしてでも逃げるかもしれないが、今回はそうはならない。
「そんなはずないだろう。触るな」
嫌な顔を隠しもしないセツの抵抗を押さえつけ、沙明は静かに笑った。いつもより低められた声も、普段の軽薄さの消えた表情も、既に見慣れたものだった。
「そういうわけにはいかねぇんだわ。……なぁ、ユーリ?」
答え合わせを求められ、俺ははっきりと正解を言い渡した。
「沙明がグノーシアだからね」
「えっ!? ユーリがグノーシアじゃ」
あ、本当に今まで気づいてなかったんだ。と俺は再び項垂れるしかなくなった。
「乗員だなぁ」
「守護天使だよ」
「えっ、えっ!?」
真相を明かしたところでもうコールドスリープの事実は変わらないので、淡々と服を脱ぎ、装飾品を外し、ポッドに入って寝転がる。
「ゆ、ユーリ、ごめん……」
いや、信じてもらえなかったのは悲しいけれど、こういうものだし、お互い様だし、別に謝る必要はないが。
つい楽しくなって、おふざけに興じてしまう。
「フラれた俺は傷心のままフテ寝しますよーだ、沙明あとよろしく」
「おう、安心しておネンネしてな」
セツの肩をさらに抱き寄せ、沙明は笑った。
グノーシアと二人きりで船に残すなんて、普通ならば何一つ安心できる状況ではないのだけれど。
沙明はセツに……いや、誰に対しても酷いことをすることはないとわかっているので、安心して眠っていられる。
ふざけ合う俺と沙明を交互に見て、置いてけぼりになっていたセツは声をあげた。
「っていうか君たち、いつの間にそんなに仲良くなってるんだ!?」
「んー、俺別に沙明のこと嫌いじゃないし」
「まあユーリは変な奴だけど、俺も嫌いじゃねぇよ」
おそらくは色々ループしていく中での影響があるのだろうけれど。冗談を言い合える友達、程度には仲良くなっている。
「というわけで、おやすみ二人とも」
「おやすみ」
「……また、会おう」
眠って、目が覚めたらまた繰り返す。なんども、なんども。
みんなに疑われて一人でコールドスリープすることになったり、いつの間にか消滅させられていたりと、穏やかに眠れることは少ないのかもしれない。
コールドスリープの寒いのは嫌だけれど、ほんの少しだけ楽しい気持ちのまま眠りについた。
2024/01/14 公開
