今日の仕事は蓮巳と二人だった。いわゆる旅番組のロケ。一泊二日で宿の案内と、あとは有名な見所とか、最近流行のグルメとか、そういう定番の。本当は紅月で受けたかったみたいだけど、神崎は舞台の仕事が入ってたんだよな。
寺社仏閣の多い地域だから寺の息子である蓮巳の名前が上がったらしいんだけど。実際、蓮巳は色々詳しくて、いつも以上にはりきって喋ってたし、撮影もスムーズに終わった。二日目の撮影は夕方には終わってたから、寮に帰ろうと思えば帰れたんだけど。明日は二人とも休みだし、どうせなら自由に観光もしたいじゃないか、と一緒にホテルの部屋をとった。素泊まりで、ほんと寝るだけの安いとこ。ダブルの一部屋。仕事で泊まった昨日の宿は四人部屋に二人で布団を並べて寝てたから落差が激しいけど、こっちは自腹だしな。ツインの部屋も取れたけど、付き合う前から遠征の時は節約の為に一緒に寝てたりしたし、安い方がいいかとこっちにした。なんなら、神崎も一緒に三人でダブルベッドに寝てたこともあるし、親しい人となら一緒に寝るのも抵抗はない。流石にあれはちょっと狭かったけどな。
しんとしてると寂しいから、なんとはなしにテレビをつけて、二人して荷物の整理を始める。といっても大したものはなくて、着替えと撮影中に買った土産物が少しくらいなので、すぐに終わった。メインの土産は明日買っていくつもりだしな。
今日はもう、少し休憩したら晩飯を食いに外に出て、あとは休むだけだ。
荷物を寄せてベッドに腰掛ける。蓮巳はまだなにやら片付けていたから、ろくに見ていなかったテレビに目を向けた。のんびりと草原に寝そべるライオンが映っていて、生態について話しているから、動物の特集をやっている番組だったんだろう。遠い異国の、自然の中で生きる獣。食うか食われるか、弱肉強食、想像もつかない過酷な世界だが、テレビの中で見てるとあまり現実味はない。別の世界の出来事、って感じがする。
場面は切り替わって、狩りのシーンになった。
「おお、すげぇな」
昔、動物園で見たのとは別の生き物みたいだ。メスのライオンが集団でシマウマを追い込んで、飛びかかる。まあ、テレビだから映像は上手いことぼかされてるけど、このシマウマは餌として食われるんだろう。
ちらりと蓮巳の方を見ると、俺の声に反応したのか、手を止めて同じようにテレビの画面を見つめていた。……寺の生まれで、子供の頃から死が身近にあった蓮巳は、俺とは違う死生観、っていうのか。生きるとか死ぬとか、そういう話に対する考え方が違う気がする。なんか、蓮巳は色々話をしてくれるんだけど、俺は馬鹿だから何回説明されてもよくわかんねぇんだよな。死んだあと、どうなるのか、とか。
テレビの中の、というかどこか遠くの地で食われたこいつは、いつか自然に帰るんだろうけど。
「自然ってのは厳しいよな。そういうもんだと分かっちゃいても、生きたまま食われるのはなぁ、流石に苦しそうじゃねぇか」
何気なく振ってみた話題で、蓮巳から返ってきたのは意外な返答だった。
「案外そうでもないらしいぞ」
少なくともシマウマが可哀想などという感想が返ってくるとは思ってなかったが、これは予想していなかった。蓮巳は俺の方に向き直って、話を続ける。
「死に直面すると、恐怖や苦痛から逃れる為に放出される神経伝達物質の影響で、多幸感を覚えるという話もある」
「なんて?」
「簡単に言うと、恐怖を紛らわせる為に快楽にすり替わるように脳が調整するということだ。臨死の多幸感……ユーフォリア、だな」
聞き慣れない単語ばっかりでいまいち話が繋がらないが、言っていることはなんとなく分かった。
「人間だと死ぬ間際に三途の川が見えたとか、花畑が見えた、という話を聞くが、あれも同じだろう。酔いしれるような心地の中で覚めない眠りにつく、というのはそんなに悪い終わりではないのかもしれないぞ。ま、実際のところは知る由も無いが」
「ふぅん」
それはそうだ。死ぬ間際のことなんて、死にかけて生き返るとかしないとわかるわけがない。体験したくもないし。誰しもいずれは通る道だとしても、まだ、当分はな。
とはいえ、死ぬ瞬間は痛くないのだとしても、その後に餌として食い荒らされるのは、あんまり気持ちの良い終わりじゃない気もする。捕食する側の命を繋いで、死んだあとは土に帰って、また新たな命へ繋がる、それが自然の摂理ってやつなんだろうが。
「死と快楽が隣合わせというのも不思議な気はするが、関連して語られることも多いな。生とは、生きることは欲と密接に関わるものだし」
蓮巳は上機嫌なのか、まだ話し続けている。おしゃべりなのはいつものことだけど、今日はずっと楽しそうだな。仕事でも今朝から、どころか昨日から喋り通しなのに、まだまだ勢いは止まらない。俺は口下手だから、よくそこまで喋れるなって感心する。
そんな蓮巳のおしゃべりを、うん、うんと相づちを打ちながらただ聞いている。理解できることばっかりじゃないけど、機嫌良く喋ってる旦那は可愛いからな。あと、声が心地良いっていうか、聞いてて飽きないっていうか。と、蓮巳が不意に俺の方に身を乗り出してきた。なんだ、今度は。
「ああ、あとは、急所が性感帯になりやすい、という説もあるな。あれも死の恐怖と快感の錯覚だとか、単純に神経の関係だとか、これもまた定かではないが」
蓮巳の綺麗な指先が、俺の首筋を撫でていく。頸動脈のあたりを軽く押されて、どくどくと自分の血流を感じる。まあ、確かに触られると落ち着かないというか、そわっとするが。これが快感かと言われてもちょっとピンとこない。むしろ突然触られたら反射的に殴り返したくなりそうな。今のは近づいてきたのが分かってたし、そもそも蓮巳に触られるのは嫌じゃねぇが。
「旦那は首が感じるのか」
そう言うと、蓮巳の眉間に深い皺が刻まれた。険しい顔してても綺麗だけど、せっかく美形なんだから機嫌良く笑ってた方がいいのにな。
「おい。どうしてそうなる」
「そういう話じゃねぇの?」
「まともに聞いてなかったな、度し難い」
腕を組んで、やれやれ、という風に首を振る。いや聞いてはいたんだって。よくわかってなかったけど。
でもやっぱり、旦那は首が弱い気もするんだよな。耳から首筋のとことか、撫でたりキスしたりすると、なんか反応良いし。
そわ、と湧き上がる悪戯心のままに行動する。肩を掴んで引き寄せて、蓮巳の首筋を軽く噛んでやると、びくっと大げさに肩が跳ねた。
「おわぁっ! い、いきなり何をする!」
「ふはっ、なんだその悲鳴」
色気ねぇなぁ。あと声でけぇ。たまらず笑うと、肘を入れられた。いてぇ、って言うほど痛いわけじゃないけどさ。
「まぁでも、やっぱり旦那はこの辺性感帯なんじゃねぇの」
そのままベッドに引きずり倒して、のしかかって、耳の下から首筋に唇を押しつけてく。触れるだけのやつ。それだけでほら、肩が震えてる。
「っ、ちょ、鬼龍……」
戸惑いに声が揺れてるのが可愛い。もっと、してやりたくなる。
けど、調子に乗ってたら勢いよく胸を押し戻された。
「ええい、やめんか! ……こんなことしてたら晩飯を食べ損ねるぞ」
顔、真っ赤になってる。コンビニなら何かしらあるだろうし別に食い損ねても……と一瞬浮かぶけれど、流石にそれは、なしだよな。旅先でしか行けないような店に行くって前から決めてたし。
「悪かったって」
「……したいのなら、食事と風呂を済ませてからだったら構わないから」
ぐっと息が詰まる。それ、今言うのかよ。このまま続けたくなるだろ。胸の奥のじりじりと灼けるような感覚を押しとどめて、わかった、と唇に軽く触れるだけのキスをする。
せっかく乗り気になってくれてるのに、今これ以上何かしたら、容赦なく一晩説教コースに変更されそうだからな。このまま、後のお楽しみにしておいた方が良いだろう。
予定通り食事に行って、戻って来てからそれぞれシャワーを済ませて。その間ほんの少し落ち着かない心地だったのは、多分お互いにだ。妙な緊張感がずっとあったけど、そこに触れると藪蛇になるから気づかないふりをしていただけ。
普通のビジネス向けホテルだし風呂も一緒に入れるほど広くないから、俺が先に使ってベッド周りの準備しながら蓮巳を待った。俺よりもずっとゆっくりなのは、色々と準備してくれてるからなんだろう。……俺に、抱かれる為に。どうしても蓮巳の方に負担をかけちまってるのは申し訳なくも思うんだけど、それでも、俺のこと受け入れてくれるのがすごく嬉しくて、愛しくて、満たされた気持ちになる。蓮巳も同じ気持ちでいてほしいなって思うし、望むことならできるかぎりしてやりたいって思う。
見慣れた練習着の姿で蓮巳が戻ってくる。昨日の夜は撮影もあったし宿の浴衣を着ていたが、今日は俺も蓮巳も持ってきた練習着だ。上着は着ていない。パジャマの貸し出しくらいはあったはずだが、慣れたものの方が寝やすいし。
乾かしきれてないのか、いつもより髪がまとまって落ち着いている。乾かしてやろうかと迷って、またあとでシャワーを浴びることになるからいいか、と結論づけた。というより、これ以上の時間も惜しい。
蓮巳はサイドテーブルにおいてあるものをちらりと見て、それから緊張した面持ちでこっちに近づいてきた。
初めてこういうことしたのは卒業してからで、それからは寮生活だし個人仕事が増えるとお互い生活時間もばらばらになるし、そんなに頻繁にできるわけでもなくて。最初の頃よりは和らいだけど、やっぱりまだ少し緊張する部分はある。
俺の座ってる横をぽんぽんと叩くと、蓮巳は素直にそこに座った。
「いいよな?」
「あぁ……」
頬に手を伸ばすと、頷いて目を伏せた。さっきからずっと、そのつもりだっただろうけど、状況や気分が変わることだってあるかもしれないし、実際、疲労や眠気に負けてるときもあった。
蓮巳は言葉にするのを好む性質だから、なるべく言葉で伝えるようにしてる。嫌がることは、したくないし。……いや、意に沿わないことをして嫌われるのが怖いだけ、なのかもしれねぇけど。そして俺のそういう弱さというか情けない部分も、こいつは、わかってて受け入れてくれる、から。
頬を撫でてやると、その手を包み込むように手を重ねてきた。それからじっと俺を見て、名前を呼んでくる。
「……鬼龍」
「ん、……!」
手を引かれたと思えば、キス、されて。蓮巳の方からなんて、珍しい。思ったより、気が急いてるのかもしれない。
そのまま腰を抱き寄せて、今度は俺の方からキスをする。舌を入れて、感じるらしい場所、探り当てて。……俺はよくわかんないけど、蓮巳は多分口の中にも性感帯みたいの、あるのかもしれない。こういうキスも好きだし気持ちいいのはあるし、興奮するけど。なんかちょっと感じ方は違うというか、なんか蓮巳があちこち敏感な気がするの、勘違いじゃないと思うんだよな。
「んんっ、ぅ……」
俺のシャツの胸元をぎゅっと握り締めて、声、漏らしてる。角度を変えて舌を擦り合わせて、混ざりあった唾液で濡れた音が響く。……眼鏡、先に外してやればよかったな。ちょっと、邪魔かも。なんて言うと絶対怒るけど、汚したり壊したりしそうで怖いんだ。大事なものなの分かってるし、予備の眼鏡かコンタクトか、大体持ち歩いてるのも知ってるけど、やっぱりいつも使ってるのがないと困るだろうから。
一度唇を離して、それから蓮巳の体をベッドに横たえる。そのタイミングで眼鏡を外して、サイドテーブルに畳んで置いた。レンズ越しじゃない、少し潤んだ瞳が見上げてくるのに、胸の奥がぎゅっとなる。
覆い被さるようにして、もう少しだけキスをする。
「はぁっ、は、っ……」
これだけで息があがってて、唇が唾液で濡れてんのいつも、エロいなって思う。
頬とか、首筋とか、触れるだけのキスを落としていく。痕、つけたい気持ちはあるけどそれはできないから、代わりにいっぱい口づけてやる。俺のだ、って刻むみたいに。
……そういえば、首がいいんだっけ?
唇で食むようにしたり、軽く噛んでみたり、それを何度か繰り返してみる。
「っ、は……ぁ」
蓮巳は手の甲を口元に押し当てて、耐えるようにしてる。気持ちいいの、我慢してるときの仕草。本当は声聞きたいけど、ここ普通のホテルだし、防音そこまでしっかりしてないだろうし。あんまり筒抜けになるのもやばい。
「も、そこ、ばっか」
「気持ち良さそうにしてるからよ」
そう言って首筋を舐めてやると、うぅ、と小さく呻くのが聞こえた。蓮巳は手を下に伸ばして自分の下着をずらした。取り出されたものは完全に勃ちあがってる。
「我慢できなくなった?」
「下着、汚しそうだから……」
「自分でする?」
「っ、……意地悪するな」
ぎゅ、と握られたシャツが引っ張られる。意地悪してるつもりはねぇんだけど。他は全然触ってないから、焦れてんだな。
「こっちも、触ってほしい……」
俺の手を取って、下に持ってく。望むように握ってやれば、先端は既に濡れていた。
「先走りすげぇな。そんなに良かったのか」
「……おまえが触るからだろう」
もう何度も触れた形を確かめるように指先でやわくなぞって、それから包み込むように握って手を動かしてやる。
「おまえに、されたら、っ……なんだって、きもち、い、ぁ」
言葉の中に甘い喘ぎが混じる。男なら誰でも感じるだろうけど、自分でするよりも好きな人に触ってもらう方が、ずっと気持ちいい。快感を引き出すように扱いてやれば、溢れた先走りが俺の手を汚してく。
「あ、ぅ……んんっ……」
声聞いてたいけど、キスして口を塞いでやる。キスしながらされるの、一番好きみたいだし。目がとろんとしてる。もうすぐイきそうなんだろう。
ふと気になって、扱く手はそのままに、キスを止めて首のところをちょっと強めに噛んでみる。びく、と体が大きく震えた。
「……え、あ、……~~ッ!」
蓮巳は声を殺すように咄嗟に両手で口を押さえた。背を反らせて、俺の手の中に精液が吐き出されてくのを受け止める。最後まで吐き出させるようにして、ゆるゆる扱いてやる。
「……うぅ」
荒い呼吸を繰り返しながら、腕で顔を隠してしまった。耳まで真っ赤になってるの、見えてるけど。ティッシュで手を拭っていると、蓮巳の声が聞こえた。
「なんなんだ、今日は、貴様……首、ばっかり」
俺は餌じゃないぞ……とぼやく。真っ赤な顔で、涙浮かべて、そんなこと言われてもさ。
「似たようなもんだろ」
だって、俺がその気になったら、簡単にさあ、どうにでもできるのに。そんな風に無防備に、信頼しきった顔でぜんぶ、さらけ出して委ねてきて。
心の奥底がそわつく。あ、これは、ちょっとだめだ。悪い感情が出そうになる。酷いことなんてしねぇよ。しねぇけど。痛いこととか苦しい思いとかはさせたくないけど、でも、めちゃくちゃに食い荒らしたくなる。俺のものだって。俺だけが、そうしていいんだって。
深く息を吐いて、それから吸う。もう一度、吐き出す。
名前をつけるんなら、独占欲とか、支配欲とか、そういうものなんだろう、きっと。
俺の大事なひと。対等に肩を並べられる相棒。こんなに綺麗なんだって自慢したい気持ちと、誰にも見せたくない、俺だけを見ていて欲しい気持ちと。
絶対に手放したくなくて、だから、俺から離れられなくなればいいのに、なんて。
こんな薄汚い感情知られたら、こいつは怯えて逃げ出すのかな。逃がすつもり、ねぇけど。
しばらく黙り込んでいたからか、蓮巳が怪訝そうに見上げてくる。
「……鬼龍?」
「んー?」
「しないのか、つづき」
言われて我に返る。完全に思考が逸れてた。
「さっきからぼんやりしているな。疲れてるなら、無理は……」
「いや、そうじゃねぇよ。するけどさ。……なんか今日、俺、もつかな、って」
色々と。理性というか自制心というか。けれど俺の言葉を、蓮巳は違う意味で捉えたようだった。
「なんだ、そんなに我慢していたのか? 別にいいのに。多少早かろうがなんとも思わんぞ」
いやまあ、それもなきにしもだけど。久々だしさっきから興奮しすぎて痛いくらいだし。でもそうじゃなくて。
「それとも一回抜いてやろうか?」
ふふ、と楽しそうに下着越しに俺のものに触れてくる。っていうか可愛がるように撫でてくる。自分は一回出して落ち着いてんのかもしれねぇけど、こいつは人の気も知らないでほんとによぉ……。
「いい。挿れたい」
「……うん。俺も、欲しい」
蓮巳がなんかしてくれんのも嬉しいし魅力的な提案ではあるんだけど、今はそれよりも、繋がりたい。手をそっと離させて、中途半端になってた下着を全部脱がせる。それから後ろに手を伸ばした。準備してきたって言ってたけど、念のため。すぐ挿れられそうだけど、もう少しだけ指で慣らしてやる。ぐちゃぐちゃな感情を落ち着けたい理由もあった。
「んっ、きりゅ、も、いいから……」
ねだるような視線。甘さを帯びた声。中が、欲しがるようにひくついてる。正直、たまらなくなる。
指を引き抜いて、口でゴムの封を切って手早く装着すると、そのままそこに押し当てた。眼鏡越しじゃない目はこちらを見ているけれど、ほんの少し視線が合わなくて、それでも期待が滲んでいる。
「う、あ、……ッ! んん……」
少しずつ腰を進めていくと、高い声があがった。それからはっと慌てたように自分の手で口を塞いで、声を抑える。
「は、……苦しくねぇか」
「あぁ、大丈夫だ」
すぐにでも動きたい衝動を必死に抑える。我慢するの結構キツい、けど、これだけは耐えないと蓮巳の負担が増えるし。イッたばっかりだから余計に。
「……」
蓮巳が目を細めて、俺の頬や頭を撫でてくる。見えてんのか見えてないのかわかんないけど、なんかこの瞬間、すごい愛おしそうな顔して、これやってくるんだよな。可愛いけどさ。こんなことしてんのに、子供扱いされてるみたいな気分にもなる。なだめられてるというか。
もういいぞ、と許すように告げられて、少しずつ腰を動かしていく。気を抜くと乱暴にしちまいそうだから、意識して、ゆっくり。
でも奥まで入れて、全部包みこまれてんの、すげー気持ちよくてやばい。締め付けてくるのも、もっとってねだられてるみたいで。
一度ギリギリまで引き抜いて、浅いところを擦ってやる。
「あ、ん……、っ」
蓮巳は手の甲で口元抑えて、それでも抑えきれない声があがってる。中の、ここ、感じるとこ。今日はあんまり触ってないけど、いつも反応違うから覚えた。
膝裏に手を差し入れて、片足を掴んで開かせて、また奥まで入って。さっきよりも深く、中までえぐって。揺さぶる度に甘く鳴いて、体震わせてる。
「んっ、う……!」
「あんま締めんな……」
暴発しそうになる。まずいな、本当に、もたないかも。
「イ、きそ」
あぁでも、蓮巳も多分、限界だ。
「蓮巳、っ」
「んっ、んぅぅ」
声を奪うようにキスで唇、塞いで。
「っ……」
「……〜〜ッ!」
一番奥を突き上げて、中に吐き出す。いつもより長く続く快感に身を委ねていると、蓮巳もまたイったらしく、腹を濡らす感触があった。
潰さないように気をつけて呼吸を整える。
呼吸が落ち着くと、蓮巳が申し訳無さそうに胸元を掴んできた。
「すまん……汚した」
……あ、シャツ。ちょっと濡れてる。
「脱いどきゃよかったな。ま、洗って一晩干しとけば乾くだろ」
どうせ帰ったらちゃんと洗濯するし。とりあえず脱いで、除けておく。
まだ動く気になれなくて、とりあえず横になる。
本当はもう一回したい、けど、明日も観光で動き回るならあんまり疲れさせても悪いよなぁ。そろそろシャワー浴びて寝る支度するべきなんだろうけど。ぴったりくっついて来られると、どうにも離れがたい。
蓮巳は上機嫌だ。満足したのかな。それならいいんだけど。甘えるように胸に擦り寄ってくるから、頭を撫でてやる。
そうしていると、不意に俺の上に身を乗り出してきた。覆いかぶさるようにして、見下ろしてくる。さっきと逆だ。
されるがまま抵抗しないでいると、首筋を甘く噛まれた。舌を這わされて、それから唇で食むような緩いキスを落とされる。くすぐったいというかそわっとする。やっぱり気持ちいいかなんてわかんない。嫌ではないけどさ。それからまた、トドメとばかりに噛んできて。痛みも感じないくらい、弱くだけど。
「っ、ふふ……やられっぱなしは性に合わんからな」
悪戯が成功した子供みたいな、してやったり、って顔で笑ってる。それになんか、火を着けられたみたいな、一瞬にして熱が上がる感じがした。
思わず深いため息が漏れた。
「てめぇマジでよ……覚悟はできてんだろうな」
快感を拾ったというよりは、この一連の行動に煽られたんだけど。一瞬で硬さを取り戻したものを、尻に擦り付けてやる。
「え、あ、なんで」
「なんでもなにもねぇだろ。今の状況分かってんのかよ?」
言われてようやく、気づいたらしい。ほんと、詰めが甘いっていうか、たまに抜けてるっていうか。一回したあとのまま、裸で人に跨がって、俺がやったのと同じようなことしてきてさ。これが挑発でなくてなんなんだ、って思うけど無自覚なのがたち悪い。
有無を言わさず、腕の中に閉じ込めるようにして抱き寄せる。
「違っ、俺は、そんなつもりでは……ッ」
蓮巳は逃れようと身を捩る。けど、逃がしてやらない。優しく大事にしてやりたいって思ってるけど、こんなに煽られて欲を抑えられるほどできた人間じゃねぇんだ、俺は。苦しくならないくらいの力で、強く抱きしめる。暴れられないように、足も絡めて押さえ込んでやった。
くそ、離せ、筋肉馬鹿め。なんて悪態が零れ始めたところで、耳に甘く噛みついた。
「大人しくしてろよ」
そのまま吐息を流し込むように囁くと、蓮巳の体がびくっと震えた。これに弱いらしいっていうのは、今までの経験則だ。ちゅ、っと音を立てるようにしてキスして、やわく腰を撫でる。そのまま尻に指を滑らせて、中に沈めて。
「き、りゅ、っや……」
さっきまでしてて、まだ柔らかい中の、敏感なとこを集中して擦ってやる。
「あぅ、それ、やめ……」
呼吸を乱して、俺の肩に顔を埋めて。腕の力なんてとっくに緩めてるのに、逃げようと思えば逃げられるだろうに、縋り付いてくる。
「うぅ……そこ、きもちい、から……」
「しってる」
ずっとされてたら我慢できなくなる、ってこと。腹に当たってるし。多分これも無意識なんだろうけど腰、揺れてるし。
「まだいけるだろ?」
「っ……」
ゴムはもう一個あるし問題ない。体勢を入れ替えて蓮巳の体をベッドに押しつける。覆い被さる体勢で手首を掴んで、見下ろす。
「食われる側は性に合わねぇからな」
さっきの意趣返しだ。本当は、蓮巳が望むなら食われたって構わないんだけど。今は言ってやらない。
唇に、舌に、甘く噛みついて深く口づけて。
無意識に唇を舐める。どれだけ食っても足りない、食い尽くしてしまいたい。だってこの、極上の味を知ってしまっては、自制心なんて簡単に崩される。
これから食い荒らされるだけの憐れな被食者。でも、無防備に飛び込んできたのはそっちだ。そうして俺の悪い欲を引きずり出したのは。
「ずるい……」
「こんな俺は嫌か?」
「わかってるくせに。……どんなお前も、好きだって」
どうしようもなく愛おしい気持ちと、どこまでも尽きない欲を、綺麗な言葉で包み込んで。
「俺も。……愛してる」
そう告げればほんの少し困ったような顔をして、それからふにゃりと笑った。
頭の良いこいつは、俺の本心なんて簡単に見透かしてて、全部わかってるのかもしれない。それでも、こんな俺を受け入れて甘やかしてくるから。
「仕方ないやつ。いい、わかった、好きに食え」
見上げてくる瞳は、うっとりと、蕩けるような色をしていた。
2024/08/26公開
