「あっははは、何これ、マジうける」
 大声で笑い転げていると、聞き覚えのある声がした。
「なんだ、どうした!?」
 慌てた様相で飛び出してきたのは、ミッドランダーの青年だった。こちらではヒュム族と呼ばれていたか。名をアルバートという彼は、この第一世界の光の戦士で――紆余曲折あって今は誰にも見えない幽霊のようなものらしいが、なぜか自分にだけは認識ができて会話も可能だった。
 度々この部屋や行く先に現れたりしていたが、普段は『まがりなりにも女性の部屋だろう』ということで一応の遠慮はしているようだった。
 とはいえ一人きりでベッドの上で爆笑していたら、何があったのかと気にもなるだろう。それで心配して姿を現してきたらしい。
 というか、ついに頭のネジでも外れたのか、とその顔に書いてあった。ちょっと失礼である。
「いやー、なんか生えちゃって」
「生え? 何がだ」
 アルバートは怪訝そうな顔をしている。それから部屋を見回したが、首を傾げただけだった。生えたと言われれば普通は植物とかそういうものを想像するだろう。部屋にキノコでも生えた、とかそんな話ならよかったのだけれど。
 彼女はゆっくりとアルバートの方へ向き直り、ベッドの上に座った。それから、何のためらいもなく自分の股間を指さした。
「はっ!?」
 アルバートの口からは今までに聞いたことがないほど素っ頓狂な声があがる。そしてぽかんと口をあけたまま、固まってしまった。それはそうだ、誰だってそうなるだろう。彼はしばし石像のように動かなくなっていたが、やがて石化が解けたみたいに元に戻った。
「お前、実は男だったのか?」
 顔を引きつらせたアルバートの視線が下から上に動き、胸のあたりでとまって、また下の方へとおりていく。
「いやぁ、二次成長出てからは女として生きてきたけど」
 ヴィエラ族は、ある程度大きくなるまで自身の性別がわからない。生まれた時にはもう決まっているというが、身体の特徴が出るのが他の種族よりも遅いのだ。第一世界のヴィース族も同じだろう。
 雌雄どちらの特徴もあるだなんて、まずありえない。あったとして、他種族でも稀に起きる生まれながらの身体的な特異と片付けられてしまうレベルだろう。
「……考えられる原因はないこともないけどさ」
 大罪喰いの光のエーテルを取り込んでから、時折体調が悪くなる。こうなる直前も、体がおかしくなっていたし。それが悪さをしているとしか思えない。
 それにしたって、まさかこんなことになるとは想像もつかなかったけれど。
「気持ち悪いしなんか痛いし」
「まぁ……そんなになってたら痛いだろうな……バキバキだし収まってねえし」
 動きやすさを重視して露出の高い格好などしていたせいか、下着に収まりきらないうえに下着に圧迫されていて、見た目も感覚も最悪でしかなかった。
「どうしよ」
「どうしよって言われてもなぁ」
 アルバートは苦虫を噛みつぶしたみたいな顔をしているが、それでもどうしたらいいか真剣に考えてくれているらしい。こんな事態でさえ、困っている人を放っておけないのか、それともあまりにも酷すぎて同情されているのか。いや、ここはアルバートの優しさなのだと思っておこう。
「とりあえず脱いでいい?」
「まあ、他に誰がいるわけでもないし、仕方ないんじゃないか。あんまり圧迫してるのもよくないだろ」
 許可が下りたので遠慮なく下を脱ぎ捨てることにする。仮にも異性の前で堂々と下半身をさらけ出すのもいかがなものかと思うけれど、今は緊急事態だから仕方がない。ということにしておく。
 遮るものもなく飛び出した男性器を見て、アルバートは露骨に顔をしかめた。
「えぐいな」
「そう? こんなもんじゃない?」
 自分もヴィエラ族の成人男性の男性器を見たことはある。冒険者になる前、森林の集落で暮らしていたころ。数年に一度の繁殖行為の為に男性たちが戻ってきたことがあった。そのころの自分は女性になりたてで、まだ行為はしなかったけれど。次回の繁殖期にはすることになるのだからと、姉さんたちに教示されたのだ。
 その『次回』が来る前に里を出て冒険者になる道を選んだので、自分が参加することはなかったが、里に戻ることになれば機会はあるのかもしれない。それはさておき。
「体がデカい種族はちんぽもデカいか。ガルジェント族とかやべぇしな。勃ってるのはさすがに見たことねぇけど、ありゃドワーフ族の腕くらいあるだろ」
 そういってアルバートは笑っているが、あんまり楽しそうではない。これは彼なりに冗談で気を紛らわせようとしてくれているのかもしれないけれど、この状況には改めて頭が痛いのだろう。
 それにしても、なんだか身体が熱くなってきた。頭がぼうっとする。発熱した時みたいだ。頭だけじゃなくて下半身はズキズキ痛いし苦しいし、なんでもいいからこの不快感から解放されたい。もともと自分のものではないのだから切り落としてしまいたいくらいだけれど、明らかに自分の身体から生えていて感覚まであるものにそんなことをしたらどうなるかは、ちょっとゾッとする。もう少し穏便な方法でどうにかするとして、この痛みと苦しいのはなんとかならないだろうか。
 深く肺から吐き出された息はすっかり熱を帯びていた。繁殖の為の時期に見ていた姉さんたちの姿を思い出す。他の種族より長命な為か、繁殖期以外の性欲は極めて緩慢だけれど、こうした感覚を知ってはいた。
 そうしてふと思う。
 男性はこの状態なら繁殖行為ができるのだから、そうすれば治まるのでは、と。挿入する女性がいないのが難点だが。
 ……いや、男性同士でもできるという話もあったじゃないか。興奮を鎮めるためだったり練習だったりで、師弟でそうした行為をすることもあると聞いた。
 ならば、できるのではないか。
 女性じゃなくてもいいのなら、可能な相手は目の前にいるじゃないか。
 思考よりも先に体が動く。アルバートの腕を引いて、そのままベッドに組み敷いた。突然押し倒されたことに驚いたのか、アルバートは目を見開いて自分を見上げている。ヒュム族にしては体格も良いし力もあるだろうアルバートを、不意打ちとはいえこんなに簡単に制することができると思わなかった。この異常には、見た目の変化だけではなくて腕力などにも変化があるのかもしれない。
「って、なんで俺が押し倒されてんだよ」
「いやぁ、えっちすれば治るかなって」
 しれっと告げると、アルバートは顔をひきつらせた。
「いやいや無茶言うなよ。俺死んでるんだぞ。幽霊だぞ」
「大丈夫だって! 超える力でなんとかなる」
「なんとかしたくねぇよ!」
 本気の悲鳴があがった。さすがに嫌なようだ。
「もー、何のために特別な力があると思ってるの?」
「少なくとも、こんなことに使うためじゃないと思うが」
 ド正論である。
 かといって、治る可能性があるかもしれないと思えば、そう簡単に引き下がるわけにはいかなかった。
「だって、いきなりこんなことになっちゃって、誰にも頼れる人いないし」
 今この状況で頼れるのはアルバートだけなのだ。自分でも無茶苦茶なことを言っている自覚はあるが、見捨てられたらどうしていいかわからない。
「ずっと痛いし気持ち悪いし、こんなんじゃ外にも出られないし。解決できるかもしれないの、アルバートしかいないんだよ。おねがいたすけて」
「ああもう、わかった、わかったから!」
 お人よしが過ぎる気もするけれど、どうしても見捨てられなかったらしい。
「抜いてやるから横になれ」
 言われた通り、アルバートの上から降りて横になる。アルバートは両腕の装備やら装飾品を外して、ベッドの下に放った。
 その行動に、装備外せたんだ、と驚く。床に落ちた時に、本当に落ちたような音と質感もあった気がする。アルバートのことはほかの人には見えないし声も聞こえないはずだから、そうした質感も含めて自分にだけ感じ取れているのかもしれない。
 そんなことに疑問を持っていると、アルバートの手が下肢に伸びてきた。
「触るぞ」
「ひゃっ!」
 言うが早いか、男性器を握られる。そこから全身に電流が走ったみたいな強い刺激に、思わず悲鳴じみた声があがった。
「ま、って、なんか変、なに」
「いいから大人しくしとけ。……あー、ポーションか何かあるか?」
「鞄に入ってるけど」
「ん。もらうぞ。……うわ、お前の鞄いろいろ詰めすぎだろ」
 そう言いながら瓶を二本ほど取り出し、ベッドに置いた。一本をあけて、下半身に垂らしてくる。
「わ……っ!!」
 その冷たさにびっくりして悲鳴をあげそうになり、慌てて自分の口をふさぐ。さすがに自分が悲鳴をあげたら誰かが来るかもしれないから。
「悪いな、ちょっと我慢しろ」
 口をふさいだまま、こくこくと頷く。滑りがよくなったせいか、余計に変な感じがする。ぬるぬるするのは、ポーションのせい、だけじゃないのかもしれない。
「っ、う……」
 竿を手で擦られ、先端を指先で引っかかれる。それだけでぞわぞわと腰が震える。アルバートは淡々と手を動かしてくる。
「これ、やばい、かも」
「ここか?」
「は、う」
 先端を集中的に刺激されて、脚が震える。こみ上げる感覚に戸惑うけれど、いやな感じはないというか、気持ちいい、の、かな。
「……っ、あ、や、なんか出そう」
「我慢しないで出しちまえ」
 手の動きを速められ、頭が真っ白になる。吐き出されたものがアルバートの手で受け止められて、それから出し切らせるようにゆるゆると扱いてくる。
 呼吸を整えていると、アルバートのため息が聞こえた。
「……治まんねぇな」
 気持ちよかったけど、まだ股間のものはおさまっていない。
「やっぱりヤるしかねぇのか……?」
「わかんない……」
「もう乗りかかった船だ、やってやるよ」
 半ばヤケになっている気もするが、アルバートはそうして上のインナー以外を脱ぎ捨てた。
 異性の、しかも他種族の裸はあまり見る機会もないが、自分についているものよりは小ぶりだし勃ってもいない。
「ヒューラン族くらいだと可愛いもんだよね」
「なっ、ヒュム族にしてはそれなりにあるからな」
 ガタイのいい種族と一緒にすんな、とアルバートは顔をしかめている。
「つぅか、そんなデカいの、入るのか……?」
「なんとかなるって!」
「はぁ……」
 盛大にため息をつくアルバートの下半身に、さっき彼がしたようにポーションの瓶の中身をぶちまけた。
「うお、冷たっ。いきなりやるんじゃねぇよ」
「ごめんごめん。……おちんちん擦ったほうがいい?」
「いらねぇ……やめろ……」
「じゃあ、こっち、触るね」
 どうするのかは、なんとなく知っている。尻肉の合間に指を滑らせ、ポーションを掬って指先で触れる。何度か撫でて指を沈めていくと、アルバートが小さく呻いた。
「ぐ、……っ」
「痛かった?」
「いや……痛くはないが違和感がすげぇな」
 ポーションの液を塗り込めるように、ゆっくりと抜き差ししていく。狭い中はそれでも、温かさを感じられるようだった。本当に、生きて目の前にいるみたいに。
「っ、……?」
 突然、ひくんと、アルバートの肩が揺れる。
「なんか、……変な」
「うん? 気持ちいいとこでもあった?」
「いやそういうわけじゃないんだが」
 違うんだ、とちょっとがっかりする。その割には、アルバートの顔は赤くなっていて、息も上がっているようだったけれど。
「これ、ただのポーション、だよな?」
「正確にはマキシポーションだけど。それがどうかした?」
「こんなに、熱くなるもんか?」
 ポーションを使うと傷の回復が速まるし、その時にほんの少し熱をもつ。けれどじんわり温かい程度で、熱いというほどではないはずだ。
「んー? 安いポーションより効き目はいいけど、普通にこの世界で流通してるのだよ。貰ったやつだし」
「そう、か」
 アルバートはまだどこか腑に落ちないような顔をしていたけれど、やがてその顔も腕で隠すようになってしまった。
「っぐ、……」
 指を増やして中を擦っていると、時折抑えきれないのか小さな声が漏れている。唇を噛みしめて必死に耐えているようだったけれど、最初は反応していなかった前も今は完全に勃ちあがっている。
「そろそろ入るかな」
「……っ、ああ」
 指を引き抜いて、充分解したそこに先端を押し当てる。自分を見上げてくるアルバートの目は、どこか期待するような色が滲んでいた。
 少しずつ腰を進めていくと、アルバートは口元を抑えて、何か必死に耐えているようだった。
「全部はいった」
「ん、だよ、これ」
 その声には、困惑の色が滲んでいる。けれど熱に浮かされたみたいな顔で、中は物欲しそうに絡みついてくる。
 温かくて、ポーションのせいかぬるぬると滑りもよくて、吸いつくように絡みついてくる。それがたまらなく気持ち良くて、一度腰を引いて再び中に突き入れた。
「……んっ!」
「っこれ、気持ちい」
 狭いけれど、きつくもない。ほどよく締め付けられ、粘膜を擦り上げる度に甘い痺れが広がっていく。夢中になって腰を動かしていると、ふと視線を感じた。
 目の前で揺れる胸が気になるのか、アルバートの視線がそちらに向いている。
「触りたいの?」
 アルバートの手を取って、自分の胸に持ってくる。
「いいよ」
 触れられた経験はないけれど、アルバートがしたいなら構わなかった。男の人は触るのが好きみたいだし。特に、豊満な胸は視線を惹きつけているし。ヴィエラ族では決して珍しいサイズでもないのだけれど、他種族からするとかなり大きいほうだろう。
「っ、クソっ……!」
 アルバートは差し出されるまま胸に触れてきた。柔らかな乳房が指の動きに合わせて形を変える。とろんと溶けたような目で胸に触れてくるのがなんだか可愛らしくて、アルバートの眼前に胸を差し出してみた。
「は、……」
 彼は口を開けて、誘われるように胸の先端に吸いついてくる。なんだかくすぐったいような、気持ちいいような。アルバートはしばし胸を構うのに夢中になっていたが、下半身に手を伸ばすとびくりと身を震わせた。
「っ、あ、ちんぽ触んっ、な……っ……」
 さっきされたみたいに、手を動かして擦ってやる。それだけで、がくがくと脚を震わせていた。
「すごい、アルバートのおちんちん、びくびくしてる。気持ちいいんだ♡」
「やめ、ろ……ッぐ」
 中がぎゅっと締め付けられる。射精はしていないみたいだけれど、軽く達したのかもしれない。
「なんか、変だ、これ。おまえ、っなんなんだ、……ぅ、あ」
「なぁに?」
「こんなの、おかしい、って」
 アルバートはいやいやをするように首を振っている。口の端から一筋唾液が零れて落ちた。
「あは、可愛い。……そんな可愛い顔見てたら、我慢できなくなっちゃう」
「はっ? ……あ、うぁ……!」
 アルバートの片脚を自分の肩にあげて、奥深くまでガツガツと腰を打ち付ける。
「はぁっ、これすごい、気持ちいね♡」
「っも、早く、終わらせてくれ、ッ」
「ん……♡」
「うぁ、あ……!」
 一番奥まで突き入れて、込み上げる快感に身を委ねる。びゅるびゅると多量に吐き出されるものを全部奥に注ぎ込んで、ふるりと身を震わせた。
 アルバートも達したらしくて、インナーに精液が白く飛び散っている。
「っは、っ、はぁ……」
 ずるりと引き抜かれたものは、先ほどまでの勢いはない。消えてはいないけれど、興奮状態はひとまずおさまったようだった。
 どろりと零れ落ちる白濁を見ながら、恍惚とため息をついた。

 落ち着いたあとは、乱れたベッドをなんとかして、そのまま転がっていた。
「尻が、痛い、気がする」
 アルバートは衣服を身につけて、離れた椅子に座っている。
「死んでからこんな体験するなんてな……」
 ひどくげんなりした様子で告げるアルバートに、彼女は上機嫌で返した。
「可愛かったよ」
「お前、もう、黙って……」
 思い出すと恥ずかしいのか、消え入りそうな声で突っ伏してしまった。
「でも治らなかったんだよね。小さくなったけど」
「ヤられ損かよ」
「……なんかごめんね?」
 首を傾げると、アルバートはガシガシと頭を掻いた。
「まぁ、時間が経てば治るかもしれねぇし。治らなかったら……次の手段を考えるしかないだろうが」
 それからちらりと下肢に目をやって、苦い顔をする。
「とりあえず、ちょっとは落ち着いたみたいだし、少しは休めるだろ」
 硬くはりつめていたものは、今は力なく垂れ下がっている。無理矢理下着に詰めているので多少圧迫される苦しさはあるが、大量に出して落ち着いたのか痛みはない。
「まあ、それでも収まってねぇけど……。外出る前に服をどうにかしねぇと」
「それなんだよねぇ。考えないと、だけど」
 疲労感に襲われ、急激に瞼が重くなってくる。
「なんか、眠気が」
「寝て起きてから考えたらいいだろ。寝ろ寝ろ」
「うん。ありがと、アルバート」
 なんとか毛布を引き上げて、肩までかぶる。
 目を閉じると、とんとん、と優しく肩に触れたような感覚があった。
「おやすみ」
「……す、み」
 穏やかで優しい声。返事をしようとしたけれど、ふにゃふにゃと、上手く声にはならなかった。きっと目覚めたら彼はいないのだろうけれど、それでも、その日は心地よく眠りに就いたのだった。

 2025/4/27 公開(10/18加筆修正版公開)